2013年12月22日(日)、『認知症なんでも相談カフェうえもり』がオープンしました。カフェはこれまで190回ほど開催させていただきましたが、期待と不安でいっぱいだった初日のことは今でもはっきりと覚えています。
私が認知症カフェの存在を知ったのは、2012年、認知症介護指導者の資格を取って少し経った頃でした。厚労省が掲げた在宅ケアを中心とする認知症施策「オレンジプラン(認知症施策推進5カ年計画)」を学ぶなかで、指導者の役割として「地域への貢献・支援」が求められていたので、すぐに興味を持ちました。
認知症カフェはアルツハイマーカフェとして1997年にオランダで始まり、認知症を持つ人やその家族、認知症が気になる人と、ケアの専門家などが気軽に集まって交流する場として、世界中に広がっていきました。日本でも認知症施策の一環として2012年から取り組みが始まり、2015年に策定された新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)では、認知症を持つ高齢者にやさしい地域づくりに向けて、全市町村での設置を目指すという目標が示されました。
折りしも2013年の春、京都新聞に与謝野町に認知症カフェが出来たという記事が掲載されました。「私もしたい!!」と思い、すぐに役所の福祉課に直行したのを覚えています。「認知症カフェ」が与謝野町のどこにできたのか、立ち上げるにはどうすればいいいか、等たくさんの質問をさせてもらいました。と同時に、町が認知症カフェと認めていたのは、既に地域支援事業の一環として地域住民への見回りをされていたところが移行したことも知りました。
それからは、「私には何が出来る?」「何がしたい?」と、思案の日々でした。「認知症カフェ」を想定通りに行おうとすると、スタッフの人数が足りません。カフェは本来、認知症当事者の方が、気軽に来られる居場所づくりだと思っていたため、ご近所の方にも来ていただきたいという思いはあるものの、対応できるのは自分と、ふれあいから一人割り当てられるかどうかという現状がある・・・。考えるばかりの時間が過ぎていきました。
悩んだ末にたどりついたのは、「ひとりで始める」という答えでした。私だけでも、持っている知識とネットワークを総動員すれば、行政の担当窓口や医療機関を紹介したり、時には他の事業所と連携したりして支援することも出来そうだと思ったのです。
それなら、あらかじめ「相談型」としてしまうのもアリなんじゃないか。そうしたら、行政の窓口が閉まっている日曜日がいいな、日曜日なら、デイサービスの場所が活用出来る!試行錯誤のうえ、認知症カフェをあえて「相談型」にして、誰もが気軽に立ち寄れる場所にする、ということに決めました。町の担当者にも、認知症の方や家族の方の支援になるなら問題はない、と認めてもらえました。
認知症講座の開催を知らせるチラシも用意して、いよいよ第1回『認知症なんでも相談カフェうえもり』の開催日となりました。応援に駆けつけてくれた友人が手伝ってくれる中、一組のご夫婦が来られ、認知症について正しく理解してもらえるよう、精一杯対応しました。今振り返ると、「初日だもの」「こんなものかな・・・」などと自問自答しながら、心の中では「失敗した!」「どうする?」「どうしよう?」でいっぱいだったように思います。
こうして歩き出したうえもりの認知症カフェは、おかげさまで昨年末に10年を迎えました。これまでにいただいたご相談の数は約280件にのぼります。この後、折に触れて、その中からいくつかのエピソードをご紹介していきたいと思います。
福祉のうえもり グループホームふれあい施設長 桑原さわ江