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認知症と「行方不明」について

今回は、認知症の方が行方不明になるというのはどういうことか、どうすればいいかを考えてみたいと思います。

ひと昔前は、認知症の方が外に出て歩いていると、「徘徊」といわれました。目的もなくただ、ウロウロしていると思われていたのです。最近では、ご本人なりの理由があることから、「一人歩き」「散歩」などと言い換えをされることが増えたように思います。

グループホームのご利用者であっても、地域の自宅にお住まいのかたであっても、認知症になると、ちょっとしたストレス(心の不安)で道に迷ったり、混乱してパニックになりやすくなります。認知症の程度によらず、同じように不安な気持ちやパニックになると、自分では正しい判断が出来にくくなるのです。

人は、行動を起こすとき、何らかの目的をもっています。認知症の症状があったとしても、同じです。ただ認知症になると、本人なりの目的や理由があって出発しても、歩いている間に(車や自転車なら運転している間に)目的そのものを忘れたり、自分が今どこにいて、どっちに行けばいいか分からなくなってしまうことがあります。

うえもりでは普段から、ご利用者が自由に外出できるように日中は鍵をかけていません。外に出られたいかたについては、一緒に歩きます。たいていの場合、「家に帰るんです」と話されます。スタッフは隣を歩くこともあれば、少し後ろについて安全を確保することもあります。その方の思いを少しでも叶えたいと思う気持ちで外出の支援をしています。

ただし、上手くいく時ばかりではありません。
私自身、グループホームのご利用者が外出されて、スタッフがしばらくの間、気づけずに捜索に至ったことを何度も経験しています。

つい先日も、ご利用者がお一人で掃き出しの窓から外出されました。いつもなら駐車場におられるのですが、その日は、「自分で帰ろう」と思われたようで、スタッフが気づいた時には、そこにおられず、早朝に1時間半以上も行方不明となったのです。スタッフが心当たりを探すも見つけられず。その後、警察の方に道端で立ち止まっているところを保護していただき、無事にホームに帰ってこられました。

基本的に玄関等の鍵は、夜間はかけていますが朝から夕方までは開けています。通路に二か所センサーが設置してあり、音が鳴るので、スタッフは誰かが通ったことをそれで確認していました。いっぽうで、門扉(ガレージ)の鍵はストッパーのみで対応していたことが、このご利用者が外出してしまわれたきっかけとなったようでした。また、この方は普段、GPSが入ったお気に入りのバッグを持って外出されるのですが、早朝ということもあり何も持たずに出かけられたことも捜索につながる要因になりました。

このことを受けて、その後うえもりでは、深夜帯については、門扉のストッパーに加えて鍵をかけることになりました。現在は、GPSを靴の中に入れるかをこの方のご家族と検討中です。このご利用者は、GPSを持っていただいて、町の見守りネットワークへの登録をしていたため、今回は大事に至らずに済みましたが、もしかしたら、このネットワークをもっと活用すればよかったのかもしれません。

こういう事態が起きたときに備えて、11月8日(水)、与謝野町において、見守りネットワーク情報伝達訓練および捜索訓練が実施されました。私は、与謝野町の認知症地域支援推進員として司会をしながら、全体を統括させていただきました。

*以下は与謝野町のFacebookにアップされた訓練内容です(一部抜粋)
【加悦地区で見守りネットワーク情報伝達訓練を実施しました】
11月8日(水)加悦地区で夕暮れ時に行方不明事案が発生したという想定で見守りネットワーク情報伝達訓練を実施しました。

令和3年度より地区を変えながら見守りネットワーク情報伝達訓練を実施しており、今年度も実際に行方不明者発生時に円滑に情報伝達できる体制の充実を図ること、GPS捜索機器利用の検証を行い、普及を進めることを目的に見守りネットワーク情報伝達訓練を行いました。

参加者には警察への届出の仕方やGPS機器の説明後、加悦庁舎周辺を歩き認知症高齢者役を探し、声掛けの体験もしていただきました。

今年度は夕暮れ時の訓練という事もあり、薄暗い中で捜索することの難しさを体感し、より現実味を帯びた訓練ができたという感想をいただきました。また、GPS機器を使う事でより捜索が行いやすくなるという体験もしていただき、多くの学びのある訓練となりました。

また、行方不明者の発見においては、日頃の地域の繋がりが大切になり、コミュニケーションを取る事、認知症への理解を深める事が、認知症の方を守る事に繋がります。認知症は今では、65歳以上の5人に1人がなる病気と言われています。認知症になってもならなくても与謝野町で安心して過ごしていけるように、認知症サポーター養成講座で理解を深める活動も行っております。

うえもりでは今後も、ご利用者の安全を第一に考えながら、その方のやりたい気持ちに寄り添った支援を心掛けていきたいと思います。

福祉のうえもり グループホームふれあい施設長 桑原さわ江