
「福祉のうえもり」創業から15年後の2010年4月1日、グループホームに続く2つめの介護サービス『認知症デイサービス 介護ハウスうえもり』が始まりました。
【突然訪れた転機、認知症デイサービス開設へ】
介護事業を開始した当初から、「家庭的な介護サービス」「認知症介護専門」を掲げていましたので、認知症の状態にある方にも安心して通っていただけるような小規模なデイサービスをやってみたいと考えていました。折しも2006年の介護保険法改正で地域密着型サービスが創設され、そこに認知症デイサービスが加わったことで、その思いはいっそう確かなものになっていきました。
しかし当時は認知症デイサービス自体が少なく、入ってくる情報も「稼働が上がりにくい」「一般のデイサービスより人手が必要」といったネガティブなものばかり。最初の一歩が踏み出せない状況が続くなか、2009年2月、転機が訪れます。与謝野町で認知症デイサービスを設置する計画が持ち上がったのです。すぐに手を上げたのは言うまでもありません。
さらに幸運は重なります。場所をどこにしようかと考えていたところ、タイミングよく『グループホームふれあい』の向かいにある土地が売り出されたのです。面積も建物と駐車場を作るのにちょうどよい広さで、知り合いが建物の設計を支援してくれることになり、一気に話を進めることになりました。資金調達からのスタートだったため、開設までの1年は文字通り怒涛の日々でした。
開設資金の調達にあたっては、経営計画の策定や開設理由・将来展望のプレゼンテーションなど、銀行との折衝という人生初の経験もしました。借入が決まった時は、頑張れば熱意は伝わるということを初めて実感しました。また自分の肝いりで事業を立ち上げたことで、それまでと違う経営者としての責任感が生まれたように思います。
【努力が報われた瞬間、竣工式~内覧会】
開設に先立ち3月22日に行われた竣工式には、主賓として太田貴美町長(当時)が来訪されました。いま思うと、民間事業者の介護施設のオープンに町長が立ち会うのは異例だったかもしれません。また竣工式の翌日と翌々日に開催した内覧会には、地域のケアマネジャーさんがほぼ全員見学に来てくだるという光栄に預かることができました。
グループホームにデイサービスが加わり、認知症介護に対する私たちの本気度が伝わったのかもしれませんが、竣工式から内覧会までは「福祉のうえもり」が地域の皆様に受け入れられているという手応えを感じた数日間でした。『グループホームふれあい』に『認知症デイサービス 介護ハウスうえもり』が加わり、「家庭的な介護サービス」と「認知症介護専門」を掲げる「福祉のうえもり」の土台が整いました。
【小規模施設だからこその家庭的なサービスを】
デイサービスを利用される方はご自宅で生活されているため、施設で共同生活をしていただくグループホームとはまた違う支援が必要となります。1分1秒でも長くご自宅で過ごしていただけるよう、デイサービスではそれまで当たり前に一人でできていたことを、ご利用時間内にスタッフと一緒にしていただくようにしています。
そのひとつが「外出」です。デイサービスというと、レクリエーションをイメージされる方が多いと思いますので、少し意外かもしれませんが、週に2~3回はどこかに出かけているでしょうか。外の空気に触れて季節を感じていただいたり、今まで行ったことがないところにお連れしたり、地域のイベントに参加していただいたりしています。
地域の催しや季節のみどころポイントなどはスタッフが事前にチェックしていますが、どこに行くかは当日のご利用者様と一緒に決めて、片道1時間くらいなら普通に出かけます。もちろん強制はしませんので、外出したくない方はデイサービスで過ごしていただきます。認知症の状態にある方をお連れしての外出は、通常はハードルが高いものですが、小規模なデイサービスならではのフットワークの良さが可能にしているのだと思います。
また『認知症デイサービス 介護ハウスうえもり』ではスタート時から、サービス時間内にご利用者様の衣類を洗濯させていただいています。多くのデイサービスでは着替えた衣類は持ち帰られるようですが、家で洗濯すること自体が困難になっていらっしゃる方もいるかもしれませんし、少しでもご家庭の負担を減らすことができればと考えています。実際にこの「洗濯サービス」は好評で、あらかじめご利用料金に入っていることもあり9割の方にご利用いただいています。
現在の「福祉のうえもり」が形作られるターニングポイントとなった『認知症デイサービス 介護ハウスうえもり』も開設から15年。2024年6月には認知症伴走型支援事業『認知症なんでもサポートうえもり』を開始しました。今年は『グループホームふれあい』にミャンマーから2名の特定技能の就労者の方をお迎えする予定です。うえもりのこれからについてはまた別の機会にお話ししたいと思います。
福祉のうえもり 代表取締役 植森 江助