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認知症カフェうえもり回顧録

2022年3月、ある一人の女性が「認知症なんでも相談カフェうえもり」を訪問されました。小学校の音楽の先生をされているというその方は、義理のお母様が認知症の疑いがあり、与謝野町の福祉課に行ったところ、うえもりを紹介されたとのことでした。

お義母様は、相談に来られる1ヶ月前に旦那さんを亡くされ、49日を迎えるまでの間に、帰り道がわからなくなる、何日も同じ服を着ているなど、気になる兆候が表れ始めたとのことでした。そのため、カフェに来られた最初のご相談で専門医の受診をアドバイスさせていただきました。

結果は脳血管性認知症。アルツハイマー型認知症に次いで多いとされており、覚えている部分と覚えていない部分がある(まだら認知症)、感情がコントロールできなくなる(感情失禁)などが特徴といわれています。

その後その方は、お義母様が特養に入られるまでの約1年間、計20回ほど相談に来られ、日々の出来事に対する具体的な接し方をアドバイスさせていただきました。「認知症なんでも相談カフェうえもり」に来られることで、その時々の不安な気持ちや心の負担が少しでも和らいでいたなら良いな、と今でも思っています。

最初にカフェに来られてから半年ほどたった頃の事です。お義母様ととても仲のよかった妹さんが亡くなり、親族会議ではそれをご本人に伝えない、ということになりました。嫁の立場では親族の決定に従わないわけにはいかず、いっぽうでその決断が正しかったのか疑問が残る。ご自身の立場と想いの間で板挟みになり、とても悩まれているご様子でした。

実はこのような状況は認知症ケアの現場ではよくあるものです。私が施設長を務めている「グループホームふれあい」でも、入居されている方のご家族が亡くなった時、私たち職員はこの方と同じ立場に立たされます。

ではその答えは。
私の答えは一貫して、「認知症の状態にある方の立場で考える」です。自分の大切な人が亡くなったことを知らされないとしたら、皆さんはどう思われるでしょうか。たとえ認知症の状態になっても感情はあります。もちろんそれを聞いた時は悲しまれるでしょうし、とても気持ちが落ち込んで、放っておけば症状が進んでしまうかもしれません。そこで大切なのは、その方の想いに寄り添い、一緒に悲しんであげることです。悲しみを一緒に受け止めて、翌日にはまた新しい朝を迎え、その方らしい日々を送っていただけるようサポートする。それが認知症ケアのプロとしての心構えであり仕事なのだと信じています。

福祉のうえもりでは、与謝野町の委託事業として、6月1日から「認知症伴走型支援事業・認知症なんでもサポートうえもり」を開始しました。これをもって「認知症なんでも相談カフェうえもり」は閉じることになりましたが、これまでにいただいた、たくさんの想いをより良い未来につないでいけるよう、これからもひきつづき認知症の状態にある方やそのご家族に伴走ご支援をしていくことができればと考えています。

福祉のうえもり グループホームふれあい施設長 桑原さわ江