来日して3ヶ月の、ミャンマー出身外国人スタッフ、ポーさんとスノーさんにお話を伺いました。なぜ介護の仕事を選んだのか、日本に来て感じたこと、仕事の苦労や喜びとは――。異文化に戸惑いながらも、夢に向かって進むお二人の姿をお伝えします。
■ミャンマーから日本に来て初めて感じたことは何ですか?
ポーさん(以下P):
私はマンダレーの近くにある町から来ました。バイクだと20分くらいで、お米がたくさんとれて緑が多いところです。日本に来てまず驚いたのは、街中の看板など、どこにでも漢字が書いてあることでした。それと、日本人の会話のスピードが速く、N4を取得していたのに、最初は聞き取るのが難しかったです。「日本語をもっと勉強しなければ」と思いました。
スノーさん(以下S):
私はタトンという町の近くにあるNaung Boから来ました。私の故郷は果物や野菜がたくさん採れます。日本に来たときは、言葉、文化、食べ物、すべてが新しい体験でした。特に苦労しているのは食べ物です。ミャンマーの料理と比べて、日本の料理は甘いと感じるので、食事に慣れるのが大変です。


■日本で「介護の仕事」を選んだきっかけを教えてください。
P:
私は24歳まで祖父母と一緒に暮らしていました。その経験から、高齢者の方々の役に立ちたい、助けたいという気持ちが強く、日本語能力試験N4に合格した後、一番やりたい介護の仕事を選びました。
S:
私には看護師になりたいという夢がありました。でも国の情勢で学業を続けることが難しくなり、日本語を勉強することにしました。日本の介護の仕事は、ミャンマーの看護師の仕事と似ている部分があると思い、挑戦することにしました。

■介護の仕事をしていて、「楽しい」と感じる瞬間や、「やりがい」を感じることは何ですか?
P:
日本語でのコミュニケーションはとても難しいです。でもつい最近、夜勤の時に、それまで話しかけても直接声を聞くことができなかったご利用者様が、私が「美味しいですか?」と声をかけると、「美味しかったよ」と返事をしてくださいました。その時は本当に感動して、介護の仕事のやりがいを感じました。

S:
私もご利用者様の元気な笑顔を見るときが一番楽しいです。一緒に日本の歌を歌ったり、腕相撲をしたり。歌にあわせて踊ることもあります。生活のいろいろな場面でみなさんの笑顔を見られることが、私にとって最大のやりがいになっています。

■日本での介護の経験を活かした将来の目標や夢について教えてください。
P:
私の大きな夢は、将来ミャンマーに帰国した後、日本で学んだ知識と技術を活かして、介護の先生になりたいということです。介護福祉士の資格をとって、お金をためて、できれば日本の大学に行きたいです。高度な介護技術や、ご利用者様への対応の仕方を、ミャンマーの人々に伝えたいです。
S:
まず日本語能力試験のN1と介護福祉士の資格を取りたいです。私はもともと看護師になりたいという夢を持っていたので、将来はミャンマーで看護師になることを目指しています。日本の介護の仕事の経験は、帰国した時に必ず役に立つと信じています 。

お二人のメンターである太田文代さん(ポーさんご担当)と松田陽子さん(スノーさんご担当)にもコメントをいただきました。
【太田さん】
ポーさんに初めて会った時の印象は、「とにかく明るい子だな」ということでした。
彼女は学ぼうとする姿勢がすごいので、私たちもいい刺激を受けています。必要なことを言えば言うほど吸収してくれ、今では見違えるほど色々なことができるようになりました(やる気がありすぎて、早とちりがあるのがたまに傷ですが…)。
いっぽうで、利用者さんの気持ちを理解してもらうのが難しいと感じることもあります。介助の仕方についても、優しくしてあげて欲しいというニュアンスがうまく伝わらないため、ジェスチャーを交えながら指導しています。
自己主張が強く、ちゃんと言い返してくれるので、真意を伝えやすいです。水シャワーや食事など、文化の違いを学ばせてもらっています。

【松田さん】
スノーさんに初めて会った時、キラキラした目をしていて、初めて来た国での不安が全くない様子に驚きました。
仕事をおぼえるのが早いし、日本の文化にもよく慣れてきました。
日本語での理解の難しさを感じるところは、「どうして○○するのか」などの説明をした時に、どこまで理解できているかを見極めることです。「はい」という返事だけでなく、表情などを見て観察していないと、理解できていないことが多いことが後になるとわかってきました。生活習慣については、日本へ来てすぐに、文化の違いからくるだろうことはいくつか注意して説明しました。
真直ぐで素直な姿勢はこれほどにも環境や仕事に慣れるスピードを速めるのかと驚きを感じています。

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真っすぐで素直なお二人の気持ちは、先輩スタッフにも確実に届いているようです。
介護の先生と看護師。立ちはだかる言葉や文化の壁を乗り越えることで、夢はさらに強く、確かなものへと育っていくのではないでしょうか。
日本で学んだ介護の知識や技術、そしてお二人の温かい心と輝く笑顔が、ミャンマーの未来を明るく照らしますように。
頑張れポーさん、頑張れスノーさん。夢に向かって。
写真提供:福祉のうえもり
企画・取材・文:篠﨑智美(あとれpr)